現人神とは?日本書紀・万葉集から天皇など実例を紹介

現人神(イメージイラスト)

神様について記述されている書物の中には「現人神(あらひとかみ)」について記されているものもあります。

この現人神とはどういう意味なのでしょうか?

その意味について、日本書紀・万葉集などで記されている例から紹介します。

 

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現人神とは?

現人神(イメージイラスト)

現人神(あらひとがみ)とは、「人間の姿で現れた神様」のことを言います。

別名、現御神、現神、現つ御神、現つ神、明神とも言います(別名の読み方はあきつみかみ・あきつかみ)。

現人神は日本書紀万葉集などの古くからある書物に実際に記載されています。

以下に「日本書紀」の例を2件、「万葉集」から例を1件記載していますが、このような内容から見て「神様が人として姿を現したもの」と考えられています。

 

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「日本書紀」に記載されている現人神①:日本武尊(ヤマトタケルノミコト)と景行天皇

大鳥大社の日本武尊(ヤマトタケルノミコト)像

大鳥大社の日本武尊(ヤマトタケルノミコト)像

日本書紀では日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の言葉として「吾は是現人神の子なり(吾是現人神之子也)」と載っています(景行天皇紀)。

※日本武尊(ヤマトタケルノミコト)=倭健命

この言葉をわかりやすく言い直すと「私は神様の子供だ」と語っています。

参考:竹水門はどこだ!(1)JapanKnowledge

参考:「日本書紀」(日本古典文学大系67・岩波書店)のヤマトタケル「竹水門」

では日本武尊の親と言えば、第12代天皇・景行(けいこう)天皇になるので、ここでの現人神とは父の「景行天皇」のことを指しています

 

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「日本書紀」に記載されている現人神②:雄略天皇と一言主神

もう一つ日本書紀に現人神について記載されています。

第21代天皇・雄略天皇は、葛城山にでかけた時に自分と同じ姿の人と出会います。

自分と瓜二つの人(神様)が「現人之神なり、葛城之一言主之大神(ひとことぬしのかみ)」と語っています(雄略天皇紀)

雄略天皇は「畏れ多いことです。神様とは気づきませんでしたと言い、刀や弓矢、衣服を献上しました。

参考:県民だより「記紀に親しむ

※一言主神(一事主神)はオオクニヌシの子供「八重事代主命(ヤエコトシロヌシノカミ)」と同一神とされています。

 

「万葉集」に記載されている現人神:柿本人麻呂の和歌

万葉集の第三(0235)に柿本人麻呂が和歌を詠んでいます

「大君は 神にしませば 天雲の 雷(いかづち)の上に 廬(いほ)りせるかも」

この和歌は「大君は神でいらっしゃるので、雷の上に仮宮をお造りになっていらっしゃる」という意味です。

ここでの大君とは天武天皇だと考えられています。小さな丘「雷丘」のことを「天雲の 雷(いかづち)」と表現しています。

万葉集にはこのような和歌がたくさんあります。

 

明治維新以後天皇の神格化により、戦争のシンボルとして使われる

「大日本帝国憲法」第1章第3条に「天皇は神聖にして侵すべからず」と記されており、天皇を中心とした国家体制に移ります。

これが切っ掛けに天皇の神格化が進み、第二次世界大戦(太平洋戦争)へと突き進んでいくことになります。

第二次世界大戦後は、天皇は「人間宣言」をし、架空のものであると話されたことから、現人神という表現は戦後なくなりました。